eスポーツ施設が知っておきたい、首・目・手にたまりやすい負荷のこと

監修:佐藤洋平 博士(医学)

はじめに

eスポーツは、見た目にはあまり身体を動かさない競技です。けれど、身体に負荷がかかっていないわけではありません。むしろ静かに続ける競技だからこそ、どこに無理がたまっているのかが見えにくい。そこに、この競技の少し特殊な難しさがあります。

実際、日本のeスポーツ選手を対象にした調査では、肩こりや肩のだるさ、眼精疲労、頭痛、首の痛みといった訴えが少なくありませんでした。海外でも、首や手首を含む上半身の不調は繰り返し報告されています(Monma et al., 2024; Rego et al., 2026)。

ここを単なる「座りすぎ」や「よくある肩こり」で片づけてしまうと、少し見誤ります。eスポーツで起きているのは、長時間座ることだけで生じる負担ではありません。視線を保ち、頭の位置を安定させ、腕と手を高い精度で使い続ける。その競技特性そのものが、首・目・手に独特の偏りをつくっていくのです。

eスポーツ・ゲームプレー中の首こり・眼精疲労・手首負荷の医学博士監修図解|ストレッチルーネ

首・目・手は、別々に疲れているわけではない

長くプレーしたあとに出やすい不調は、首や肩だけに限りません。目が疲れる。頭が重い。手首がだるい。こうした訴えが並んで起きやすいのが、eスポーツの身体負荷の特徴です。

画面を見続ければ、視線は固定されます。視線が固定されると、頭の位置も動きにくくなる。さらに、腕を前に置いたまま手首や指だけを細かく使い続けると、肩まわりの動きも小さくなります。つまり、首・目・手はそれぞれ独立して疲れているのではなく、ひとつのプレー姿勢のなかで一緒に負荷を引き受けているわけです。

実際、画面との距離の近さや、モバイル端末中心のプレーは、首の痛みや肩の不調、眼精疲労などと関連していました(Monma et al., 2024)。首だけ、肩だけの問題として切り分けるより、プレー姿勢全体の偏りとして捉えたほうが、実態には近いはずです。

ゲームプレー姿勢による首・肩・上半身の偏り蓄積を示す医学博士監修図解|ストレッチルーネ

真剣にやる人ほど、負荷は同じ場所に残りやすい

この問題をさらに見えにくくするのが、競技として真剣に取り組む人ほど、フォームが安定しやすいことです。余計な動きが少ないのは、プレーの精度という意味では望ましいことです。けれど身体の側から見ると、それは同じ部位に同じ緊張が残りやすいことでもあります。

プレー量が多い人や競技性の高い人ほど、首や肩、腰などの痛みを訴えやすいことも報告されています。加えて、睡眠不足やウォームアップ不足との関係も指摘されており、「長く続けるほど少しずつ偏りがたまっていく」構図が見えてきます(de Araujo Brito et al., 2025)。

つまり、eスポーツ施設が向き合っているのは、ただ座って遊ぶ利用者だけではありません。高頻度で来る人、長時間プレーする人、競技として打ち込む人ほど、身体の負荷は蓄積しやすい。その前提を持っているかどうかで、施設の設計も、提供できる価値も変わってきます。

問題は強い痛みより、偏りが残り続けること

もちろん、すべての利用者が大きなトラブルを抱えているわけではありません。実際に多いのは、「少し張る」「なんとなく重い」「抜けきらない」といった、はっきり言い切れない不調でしょう。

ただ、その"少し"が毎回残るなら、話は変わってきます。首や肩、目や手首にかかる負荷が、プレーのたびに少しずつ積み上がっていくからです。大きな痛みが出る前に、まず戻りにくさが残る。eスポーツの身体負荷は、そういうかたちで表に出てくることが少なくありません。

だから施設側に求められるのも、大げさに何かを制限することではありません。偏りをため込みすぎない環境をどうつくるか。その視点です。定期的な休憩、姿勢環境の工夫、短いウォームアップ、負荷管理の必要性は、研究でも繰り返し示されています(Rego et al., 2026; de Araujo Brito et al., 2025)。

施設価値になるのは、スペックだけではない

eスポーツ施設の価値は、どうしてもスペックで語られがちです。PCの性能、回線、デバイス、配信環境。もちろん、それらは大事です。けれど、長く通う利用者にとっては、もうひとつ見逃せない条件があります。長くプレーしても、身体の偏りを引きずりにくいことです。

少し視線を遠くに戻せる。少し首や肩の緊張を抜ける。少しフォームの偏りをほどける。そうした小さな切り替えがあるだけでも、その後のプレーのしやすさは変わってきます。派手ではありませんが、体験としては確かに効いてくる部分です。

ここでストレッチルーネのような器具を考えるなら、役割は首をどうこうすることではないはずです。プレー姿勢のなかで前に集まりやすい上半身を、短時間でいったん戻す。そのための選択肢として置く。施設のなかでは、そのくらいの位置づけのほうがむしろ自然でしょう。

"整える場所"がある施設は、印象に残る

機材の良し悪しは、利用者にもわかりやすい価値です。一方で、身体の戻りやすさは、体験してはじめてわかる価値です。言葉になりにくいぶん目立ちませんが、実際にはそうした部分が施設全体の印象を底上げすることがあります。

長くプレーしたあと、首が詰まったまま終わるのか。目の疲れを引きずったまま次に入るのか。それとも、数分で少し切り替えて戻れるのか。その差はスペック表には載りません。けれど、利用者の記憶には残ります。

静かな競技ほど、身体の偏りは見えにくい。だからこそ、その見えにくい負荷に先回りできる施設のほうが、結果として選ばれやすくなるのではないでしょうか。

eスポーツ施設でストレッチルーネを活用した首こりケア・身体負荷管理による施設価値向上

おわりに

eスポーツの身体負荷は、一般的な「肩こり」や「座りすぎ」だけでは捉えきれません。視線を保ち、頭をぶらさず、腕と手を高い精度で使い続ける。その競技特性そのものが、首・目・手に独特の偏りを生みます。

だから施設側が見るべきなのも、ただ快適に座れるかどうかではありません。そうした偏りを、どう蓄積させにくくするかです。プレー中だけでなく、前後や合間まで含めて整えられている施設のほうが、利用者にとっては長く付き合いやすい。eスポーツ施設の価値は、その視点が入ったときに、もう一段深くなるのだと思います。

参考文献

de Araujo Brito, M., Silva de Souza, F., de Souza, R. M., Vieira, A. G., & Cardoso, F. L. (2025). Musculoskeletal pain in eSports players: Clinical implications for ergonomics, exercise, and preventive physiotherapy. https://doi.org/10.1080/15438627.2025.2594401

Monma, T., Matsui, T., Koyama, S., Ueno, H., Kagesawa, J., Oba, C., Nakamura, K., Takagi, H., & Takeda, F. (2024). Prevalence and associated factors of physical complaints among Japanese esports players: A cross-sectional study. Cureus, 16(8), e66496. https://doi.org/10.7759/cureus.66496

Rego, D. de A. S., Costa, M. M., Pessôa Filho, D. M., Borin, J. P., & Faria, C. D. C. M. (2026). Do esports players experience pain? Pain prevalence of esports players: A systematic review and meta-analysis. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41483384/